経堂系グルメVol.9

"ゆるウマ"脱力系ダイニング・バー
「太田尻家」

カニでダシをとった「タコとアサリの雑炊」(500円)。カラダの芯からポカポカする。

経堂の癒し処といえば、なんといっても、すずらん通り奥の塩原湯。農大通り側の上総湯や経堂サウナなどの名湯が相次いで廃業してしまった寂しい“お湯”事情を考えると、塩原湯のラドン温泉と湯煙の向こうにそびえ立つ富士山の包容力ある姿は、実に有り難い。

タイル貼りの湯船に浸かると、脳髄から背骨にかけて溜まったストレスや疲れが、一瞬にして抜け溶ける。2004年の春までは、風呂を出ると真っ先に、番台でフルーツ牛乳を買って飲んでいた。 しかし今は、十回に四回は、フルーツ牛乳を我慢して、足どりフワフワ脳味噌ヘロヘロ、番台の横を抜けて表に出る。そして、通りを経堂駅と反対方向へ70メートルほどの右手角。「太田尻家」という店に入り、カールスバーグの生を頼むのだ。

湯上がりの身体と頭をこの店は、イスタンブールの蒸し風呂マッサージのように心地よくほぐしてくれる。が、脱力のツボを押すのは、リーズナブルな値段に関わらず申し分ない酒と料理、そして、ご夫婦のキャラクターだ。 太田尻家という名前は、造型作家でイラストレーターの太田さん(奥さま)と造型職人で雑文家の田尻さん(旦那さま)の名前が合体して一家となったものだとか。

店内は、あらゆるものが手作り。もとは中華の定食屋さんだったのを、田尻さんが一ヶ月の突貫工事を敢行して、厨房からテーブルから椅子から床からあらゆるものを作ってしまった。そこに太田さんが自作の特殊キャラクター人形を浮かべたり吊るしたり据え付けたりしてセッティング。田尻さんお気に入りの音楽をかけて、まったり不思議な太田尻家が完成した。

お酒は、ビール、ワイン、日本酒、焼酎、スコッチなど、チョイスにセンスの光る銘柄が、ショットで500円くらいから。料理は、釣り竿一本持ってスペイン中を旅し、ウナギの蒲焼き三昧の日々を過ごしたという田尻さんが腕を振るう。豚バラ巻きコロッケ(500円)は、注文を受けてからパン粉をおろして作る。揚げたての熱々にトマトベースの冷たいソースを合わせていただく。

低温のオイルでこつこつ揚げた新鮮なイワシに、炒めたオニオンの味と風味が絶妙にからむ自家製オイルサーディン(500円)は、どんな酒とも引き立て合う群れを成す魚ゆえの社交的な一皿。十数種類のリーズナブルな料理以外に酒に合うものがもう1つ。それは、太田さん田尻さんとの会話。話題の多いお二人に会いに、オープンから半年も経たないうちに、ひょっこり顔を出す地元の人たちが少なくないからスゴイ。

塩原湯から太田尻家への“ゆるウマの旅”。そんじょそこらの温泉宿に泊まるより安くて満足度が高いと思うんだけど。  (文・すずらん とおる)

店内
店の前の道にいい音楽が溢れてくる。ついついツラれて入ってしまう。 カウンターから見た厨房。田尻さんの仕事を見ながら酒を飲む。
太田さん+田尻さん=太田尻家。ザ・太田尻家です。

「太田尻家(おおたじりけ)」
東京都世田谷区宮坂3-51-1 海野ビルF 
TEL:090-9645-1337(店主携帯電話)
電話を引いておりませんのでお問い合わせは携帯に。
太田尻家HP→ http://www.ne.jp/asahi/ootajiri/ke/

経堂系グルメ日記

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