2005.10.30
アートでほっと一息つける場所
「ロバロバカフェ」
「ロバロバカフェ」一度聞いたら忘れられない名前である。そのネーミングの理由をもう何度も質問されただろうに、オーナーのいのまたせいこさんはクスッと笑いながら嬉しそうに、そして幸せそうにこう答えた。
「ロバってのんびりしてそうでしょ。で、1個じゃつまんないから2個つけてみたの。」
賑やかなすずらん通りを歩いて8分ほどのところにある「ロバロバカフェ」は、そのネーミングの通り、ゆったりとした穏やかな時間の流れる心地よいカフェギャラリーだ。不揃いのイスたちが並ぶカウンターで、いのまたさんのいれるカフェ・オ・レをすすり、お友達が焼いて持ってきてくれるという「MOMO cafe」の胡桃のブラウニーを口に運べば、何ともほっこりしたいい気分になる。バナナのチーズケーキも甘さをおさえたやさしい味。月ごとにケーキの種類が変わるというのもまたウレシイ。小腹が空いたら「ぶどりカフェ」の天然酵母パンにはちみつとバターをつけていただこう。
年内はもう予約でいっぱいという入り口とカウンターの後ろのスペースは、アーティストたちの表現の場として利用し、この日はヨーロッパの絵本を中心に、切手、雑貨なども集めたオンライン本屋a2g+(books)の隠れコーナー「チイミヤ」さんがお店を開いていた。サイト内に年に2,3回不定期で表れ、48時間たつと消滅してしまうという「チイミヤ」は、本当に熱意のある人にしか商品をゆずらないというこだわりのお店で、とにかく「本が大好き」といういのまたさんが、頼んで出店してもらったのだそう。
本をテーマにした展示の他、昔、李康則氏(経堂系ピープル参照)と陶芸教室の生徒同士だったという彼女の陶芸家仲間たちの作品展、またベリーダンスやたいこ教室などといった参加型のワークショップも開かれているそうだ。
「自分の好きなことを通じてたくさんの人に出会える、そして自分の好きな作品を作った人と実際に出会えることが何よりも楽しい」といういのまたさんは、このお店を始める前、実は7年間沖縄に住み「古い着物をほどく仕事」や「島のガイドブックを作る仕事」をしていたそうだ。「その前は新潟に住んでいたんだけど、あったかいところでのんびりしたいな〜と思って地図をみたら石垣島が目に入って」と、朗らかに笑う。「どこに行っても食べていける」という言葉は非常に印象的だ。
片隅に飾られた小さな花、ストーブの上のやかん、友達が焼いたお皿やカップ、そしてお客との距離感など、さりげないようで、実はきちんと計算されたこだわりと、ぬくもりが何とも心地よい空間である。店内にながれるトム・ウェイツの「モッキンバード」の曲がぴったりのお店だった。(文・SAK)
ロバロバカフェ
- 住 所
- 東京都世田谷区経堂2-31-20