2005.11.3
大阪人も感涙の本場・お好み焼き
「ぼんち」
経堂駅の北側、Odakyu-OXの前の道を西(千歳船橋方向)へ、しばらく行くと、経堂西通り(北側)に入ります。右手の「CAFE&BARマレット」や左手の「からから亭」を通り過ぎてしばらく歩くと、四つ角の右手に灯る赤提灯に「お好み焼き」の文字。そこが、経堂が誇る昔ながらの浪花のお好み焼き屋さん「ぼんち」です。
この「ぼんち」は、近年は大阪の商店街でも少なくなってきた家庭的なお店。
今年(2005年)、阪神ファンの名物お母さんが亡くなられましたが、70歳を越えても元気な釣り好きのお父さんが、昔の大阪人独特のやわらかいムードで、お客を出迎えてくれます。
名物は、やはり各種お好み焼き。
近年、大阪のお好み焼きチェーン店が東京にも大々的に進出していますが、大阪生まれの編集部の人間には、大抵のお店のお好み焼きが、ベチャベチャして重い感じがするのです。
が、この「ぼんち」のお好み焼きは、ほぼ同じような材料を使っているにもコナモン(粉もん)なのにも関わらず、お父さんの作り立てをコテで口に放り込むと、サクサクフワッとした食感とともに、カリカリに焼かれ「ベーコンなんかなんぼのもんじゃい!」と香ばしい豚バラ肉やほどよく加熱されてシャキシャキしたまま甘みの出たキャベツや、その他、卵・干しえび・山芋などの具材が、ソース・マヨネーズ・青のり・紅ショウガの風味と溶け合って、目を閉じれば、脳の味覚中枢に道頓堀のグリコのネオンが浮かんでくるほどのウマさです。
この味わいの肝は、サクサクフワッとした食感。この「サクサクフワッ」感が、粉やキャベツなどの何てことのない安価な食材を庶民の味覚の桃源郷へと誘う秘密。一流の握り寿司のシャリには、米粒と米粒の間に微妙なスキ間があって、微妙にフワッとしていなければならないのと同じだと思います。
ちょっと説明が長くなりましたが、そんな訳で、「ぼんち」のお好み焼きは、ブタ、イカ、エビ、ミックス、なんでもオススメです。焼きそばの麺を重ねるように焼くモダン焼きも絶品。蒸し焼きにした麺をお好み焼きの下敷きにして鉄板の上で焼く際に、中華のあんかけ焼きそばの麺のように、ほどよくカリカリになっているのがモダン焼きの味わいの要です。
できれば焼きたてを鉄板の上に置いてもらい、コテで一口大に切り取りすくって熱いうちをハフハフいいながら食べる。お好み焼きをすくう際、鉄板とミクロのレベルで接する金属製のコテには、当然、熱が伝わっていて、鉄板に準ずる熱を持っています私たちが、焼きたての熱々の味わいを損なうことなく、お好み焼きを食べることができるのは、コテのおかげなのです。
また長くなりましたが、「ぼんち」のお好み焼きは、なるべくコテで食べてください。お好み焼き以外にも、洋食屋さんでポークソテーにするような、ぶ厚い豚のロース肉を鉄板焼きにして、薄くふわっと焼いた卵にくるんだトンペイ焼きも本場の味。ホタテや鮭、ジャガイモなどの「ぼんち」風鉄板焼きメニューも、ビールにピッタリ。焼きそばやソバ飯、ウインナーキャベツも、リピーターの多いメニューです。
ドリンク・メニューは、生ビール、日本酒、焼酎、サワーなど。焼酎は、ボトル・キープも可能です。
そんな本場の味の「ぼんち」には、いろんな職業の関西人が集まってきます。阪神が勝てば盛り上がり、ここが東京の一角だとは信じられないほどです。また、休日になると海や川に繰り出して大物をねらうお父さんの釣りのキャリアは、少年時代に河内の溜め池で釣っていた時代から数えると、60年以上。そんなお父さんとの話が楽しみで通い続ける関西出身以外の常連客も少なくありません。
ぼんち
- 住 所
- 東京都世田谷区経堂3-37-20