2005.11.3
すずらん通りの大人の隠れ家
「灯串坊」
色とりどりのファッションに身を包む若者が並ぶすぐ側に、対照的な大人の雰囲気の店がある。レトロモダンな和風の佇まい。大人の隠れ家的な雰囲気を醸す「灯串坊」である。
ご主人の上保秀雄さんと奥さまが切り盛りする店内は、優しい間接照明に彩られる和み空間。紀州の備長炭で丹念に焼き上げる焼き鳥などの焼き物は、どれも香ばしく味わい深く、しかも、焼き鳥が1本90円からと、リーズナブルな値段。
オススメしたいのは、メニューの冊子ではなく黒板に書いてあるツクネ(200円)。軟骨のコリコリ感がほどよく残り、噛めばジューシーな旨味が口いっぱいに広がる、まさに絶品。ジャガバター(350円)は、よくあるようなオーブンレンジでチンしたようなものではなく、北海道産の小ぶりのジャガイモを炭火でじっくり焼き上げバターを添えたもの。だから、外はカリカリ中はホクホク。バターとからむと、たまらない。ジャガイモがこんなに美味しい野菜だったかと再認識させてくれる一品だ。肴が良ければ酒もよし。焼酎も日本酒も、こだわりの品ぞろい。
それにしても、灯串坊の良いところは、こだわりの店にありがちなスノッブさや堅苦しさがないところ。気さくな人柄のご夫婦は、初めての人でも必ず「ほっ」とさせてくれる。
意外なことは、長年この道にいるように見えるご主人がサラリーマン経験者だったこと。長らく市場に勤めていたのだが、同じ場所で今川焼などの商売を営んでいた先代が亡くなったのをきっかけに、修行をして、この店を開いたのが10年前なのだという。
「ぼくは生まれも育ちも、このすずらん通りなんだよ。だからさ、店が一つなくなるってことは、街の灯りが一つ消えるってことで、それじゃ寂しいなと。そう思って、この場所で商売を引き継ぐことにしたんだよね」
灯串坊の隠し味は、地元すずらん通りへの愛情なのかも知れない。 (文・経堂敬)
灯串坊
- 住 所
- 東京都世田谷区経堂2-8-8
- 電話番号
- 03-5450-1122
- 営業時間
- 18:00〜1:00A.M.
水曜定休